梅の花 
あかぬ色香も 
むかしにて 
おなじかたみの 
春の夜の月

新古今和歌集 巻第一 春歌上 47

淡い香りで春を知らせてくれる梅の花。万葉集の時代以前から愛されてきた歴史があり、非常になじみ深い花木です。また園芸ものとしての歴史も長いため多様な品種があり奥深い一面もあります。
梅の育て方

置き場所

屋外の場合

屋外での管理が基本です。ずっと屋内で育てると弱ってしまう原因となりますので、鑑賞するなら1週間程度屋内で楽しみ、そのとき以外は屋外で育成するようにしましょう。

【春・秋】
風通しよく、明るい場所で育成します。日差しが強すぎる場合は半日陰で育成しましょう。

【夏場】
風通しのよい明るい半日陰で管理します。強い直射日光や西日は葉焼けや急激な水切れの原因になるので、よしずや遮光ネットなどを用いて日陰をつくると良いでしょう。もしくは、午前中は日が入り、午後は西日が当たらない場所でも良いです。

【冬場】
しっかり冬を体験させる必要があります。屋外管理で問題ありませんが、氷点下に冷え込む場合は寒風や霜から保護しましょう。ムロや半屋内(寒い場所)などで管理することをオススメします。なお、落葉後は日光に当たらなくても特に問題ありません。

屋内の場合

屋内で管理する場合、風通しの確保が重要になります。常時屋内では弱ってしまいますので、外の空気に当てたり、雨に当てたりしてあげると植物はリフレッシュできて元気に育ちます。また、できるだけ日当りの良い環境で育成しましょう。

エアコンの風邪 が直接当たる場所や、直射日光が長時間当たるなど極度に気温の上がる場所は避けましょう。

【春・秋】
日当りの良い場所で育成します。窓辺など、出来るだけ風通しのいい場所が理想的です。

【夏場】
日当りと、風通しのよい場所で管理しますが、夏の強い直射日光は葉焼けの原因になります。レースのカーテンなどで遮光してあげると良いでしょう。また、しめきった部屋では蒸れて痛んでしまう可能性がありますので、できるだけ風を通してあげると植物に優しい環境になります。

【冬場】
少なくとも5℃以下の環境で冬を体験させる必要があります。11月~2月の間は屋外に近い環境で育成しましょう。梅は落葉樹なので、寒さを体験すると紅葉し、そのあと葉を落とします。落葉後は日光が当たらない環境でも問題ありませんので、寒い場所で管理しましょう。

→植物の冬越しについて

水やり

水やりの目安は、春秋は1日1回、夏は朝夕の1日2回、冬は2〜3日に1回です。花の咲くころから急速に水上げが始まり乾きやすくなりますので水を切らさないように注意しましょう。暑い時期や乾燥しやすい時期の葉水は、葉の乾燥防止や健康維持に効果的です。朝や夕方に霧吹きやジョウロで葉水を与えましょう。

→みずやりのタイミング

7月~8月の花芽分化期(翌年の花芽が出来る時期)は過湿気味にしていると花付きが悪くなることがあります。この時期は「乾いたら水をあげる」という事を意識すると良いでしょう。

また、どうしても乾きやすい時期や外出時などは、腰水という方法も有効です。

→腰水について

肥料

芽だし後、葉が固まる6~7月頃と、10~11月頃、週1回を目安に液肥を与えます。
より健やかに育成するために、そして花付きをよくするために肥料は効果的です。

また、花後の3~5月頃に活性剤を与えると樹勢が落ちにくくなるのでオススメです。

※バイオゴールドヴィコント564を基準にしています。その他の肥料を与える場合は説明書などを参考にしてください。
※置き肥の場合は上記の期間に月1回、固形肥料を与えます。

なお、春先の開花後は1カ月ほど「活性剤」のみ与えるようにしましょう。頻度は週1~2回が目安です。花が咲く木全般に共通しますが、開花後は少なからずストレスやダメージを受けています。その状態をケアする意味で活性剤のみ与えると樹勢が落ちず、健全な成長を助けることに繋がります。

病害虫

アブラムシ、カイガラムシ、ハマキムシが付くことがあります。また、梅雨など、高温多湿の時期はうどんこ病に注意します。

特に冬季間に硫黄合材やマシン油などを散布しておくと、春以降の害虫被害が大幅に軽減します。

→病害虫について

梅の仲間

野梅、緋梅、豊後系など。

木々の小話

多くの詩人に愛された梅

梅は今も昔も早春を彩る花木として親しまれ愛されてきました。
短歌としては万葉集、古今和歌集~現代に至るまで数多くの詩が詠まれています。
冒頭の短歌は皇太后宮大夫俊成女が詠んだもの。

『 梅の花 あかぬ色香も むかしにて おなじかたみの 春の夜の月 』

通解:梅の花はその飽きることのない色香も昔のままであり、同じような形見として春の夜の月が浮かんでいます。

梅の花と春の夜の月。「むかし」から「飽かぬ」女性の色香とも関係があるのかないのか、詳しい意味は想像するしかありませんが全体的な雰囲気がとても美しい短歌です。

梅の歴史

梅は中国原産で、日本には朝鮮経由で渡来したといわれていますが、いつ日本に来たのかはっきりしていないのだそうです。弥生時代の遺跡からは梅に関する遺物が発掘されていることから、九州周辺では自生地もあったのではないかと推察されています。

しかし万葉集には100を超える数の歌が詠まれていることから、奈良時代には日本で栽培されていたのは間違いないとされています。また興味深いことに、万葉集で登場する梅の花の色は、全てが白い花とされています。この時代に花というと、桜ではなく梅の花を指していた点も、当時の人々がいかに梅を愛していたかがうかがい知れます。

梅の種類はもともと20種前後であったと言われますが、江戸時代ごろに盛んに品種改良が行われ、18世紀には100種以上の品種が作出されていました。その後も品種は増え続け、現在では園芸向けだけで300種以上に上ります。

梅の詳しいお手入れ

梅に適した用土

基本的には赤玉土を主体に鹿沼土などを混ぜた混合土を使用します。

「石木花の土」が適合します。

植え替え

梅の植え替えの時期は芽出しは始まった頃の2~3月が適期です。葉がついた状態や、開花直前の植え替えは木にダメージを与えたり、花が咲かなくなってしまう事があります。2~3年おきを目安に行うといいでしょう。

梅は根を深く切ってもまた新しい根が発根してくれます。植え替えの時は根をしっかり処理しましょう。不要な根や、太い根は切り落とします。

梅の花がら摘み

梅の花が咲いた後、花をそのままにしていると実がなりますが、実を付けると木が体力を消費してしまい翌年の花付きが悪くなってしまいます。なので花が咲いたら花がらを摘み取りましょう。咲いた花が萎んできたら、元の方から摘み取るようにします。簡単ですが大切な作業です。

梅の剪定

梅はその年に伸びた枝に花芽を付ける性質がありますので、剪定をしないと極端に花数が減ってしまいます。また樹形も乱れやすくなりますので、確実に剪定しましょう。専門的に捉えると色々と難しいテクニックがありますが、基本の剪定は簡単です。葉芽の位置を確認しながら2芽残して芽のすぐ上で切り詰めます。まずはこれをしっかり行えば問題なく毎年花を楽しめます。

剪定の適期は、花が終わって芽が動きだす2月~3月にかけて。厳寒地では、やや葉が伸びだした4月頃に剪定することがあり、葉芽が確認しやすくなるメリットがありますが遅くとも6月までには剪定を終えましょう。

また、時々ヒコバエという根元から勢いよく伸びる枝が出てきますが、これを残しておくと養分を吸い取られて本体が弱ってしまいます。これは見つけ次第切り取りましょう。

梅の育成のポイント

○植物に四季を体感させてあげることで末永く健康的に育成できます。特に冬はしっかり休ませてあげましょう。

○夏は直射日光を避けた、明るい日陰や半日陰で管理します。よしず等で日陰を作るのもいいでしょう。

○小さな鉢で育成する場合、水切れさせないように注意します。特に夏場は、朝に水をやっても夕方乾いてしまう様なら置く場所を工夫し、出来るだけ涼しい所で管理しましょう。どうしても乾いてしまう場合には、腰水で凌ぎます。※日々の育て方をご参照ください。

○暑い時期や乾燥する時は、朝や夕方に葉水をするのも大変効果的です。

○屋内管理の時間が長いと、徐々に元気がなくなってしまいます。できるだけ自然の風に当てて育てるよう心がけましょう。雨の日は外に出して雨に当ててあげたり、夜は夜露に当てたりするとリフレッシュできます。

○活性剤を定期的に与えることで、より健やかに育成できます。

○花を咲かせやすくするには、剪定が欠かせません。そして、肥料を与えることが大切です。

→肥料・活性剤

長楕円形で縁には鋸歯があります。
品種によって開花期は違いますが、早春にとてもよい香りの5弁花の花を咲かせます。
花後に実がなります。
耐寒性
水やり
日光
肥料