姫寒菊|石木花図鑑

すぎてゆく 
秋の日影は朝ごとに 
うつろふ菊の
色に見えけり

藤原公衡 - 三位中将公衡卿集

姫寒菊

古くから日本人に親しまれてきた菊の花は、秋を代表する和の花の一つ。菊は樹木ではなく多年草ですが、菊には数多くの品種があり、姫寒菊は幹が木質化しやすいことから通称「盆栽菊」とも呼ばれます。寒さにも強いので他の菊と比べても育てやすく、初心者の方にもおすすめです。

幹が木質化しやすい姫寒菊は徐々に味のある樹形に仕立てる楽しみもあります。また、晩秋の寒さと共に紅葉する葉と開花が重なると、何とも言えず美しい色彩を見ることができます。
姫寒菊の育て方

置き場所

屋外での管理が基本です。ずっと屋内で育てると弱ってしまう原因となりますので、鑑賞するなら1週間程度屋内で楽しみ、そのとき以外は屋外で育成するようにしましょう。

屋外の場合

【春・秋】
風通しよく、明るい場所で育成します。日差しが強すぎる場合は半日陰で育成しましょう。

【夏場】
風通しのよい明るい半日陰で管理します。強い直射日光や西日は葉焼けや急激な水切れの原因になるので、よしずや遮光ネットなどを用いて日陰をつくると良いでしょう。もしくは、午前中は日が入り、午後は西日が当たらない場所でも良いです。

【冬場】
しっかり冬を体験させる必要があります。屋外管理で問題ありませんが、氷点下に冷え込む場合は寒風や霜から保護しましょう。ムロや半屋内(寒い場所)などで管理することをオススメします。

屋内の場合

屋内で管理する場合、風通しの確保が重要になります。常時屋内では弱ってしまいますので、外の空気に当てたり、雨に当てたりしてあげると植物はリフレッシュできて元気に育ちます。また、できるだけ日当りの良い環境で育成しましょう。

エアコンの風 が直接当たる場所や、直射日光が長時間当たるなど極度に気温の上がる場所は避けましょう。

【春・秋】
日当りの良い場所で育成します。窓辺など、出来るだけ風通しのいい場所が理想的です。

【夏場】
日当りと、風通しのよい場所で管理しますが、夏の強い直射日光は葉焼けの原因になります。レースのカーテンなどで遮光してあげると良いでしょう。また、しめきった部屋では蒸れて痛んでしまう可能性がありますので、できるだけ風を通してあげると植物に優しい環境になります。

【冬場】
少なくとも5℃以下の環境で冬を体験させる必要があります。11月~2月の間は屋外に近い環境で育成しましょう。寒さを体験すると紅葉し、花を咲かせます。

→冬の管理について

水やり

水やりの目安は、春秋は1日1回、夏は朝夕の1日2回、冬は2〜3日に1回です。春~夏は特に乾きやすくなりますので水を切らさないように注意しましょう。暑い時期や乾燥しやすい時期の葉水は、葉の乾燥防止や健康維持に効果的です。朝や夕方に霧吹きやジョウロで葉水を与えましょう。

→みずやりのタイミング

また、どうしても乾きやすい時期や外出時などは、腰水という方法も有効です。

→腰水について

肥料

4~10月頃にかけて、2週に1回を目安に液肥を与えます。
より健やかに育成するために、そして花付きをよくするために肥料は効果的です。

また、花後に活性剤を与えると樹勢が落ちにくくなるのでオススメです。

※バイオゴールドヴィコント564を基準にしています。その他の肥料を与える場合は説明書などを参考にしてください。

※置き肥の場合は上記の期間に月1回くらい、固形肥料を与えます。

病害虫

アブラムシ、カイガラムシ、ハマキムシが付くことがあります。また、梅雨など、高温多湿の時期はうどんこ病に注意します。

特に梅雨などは蒸れによって病気が発生しやすくなります。
必要に応じて殺菌剤を与えたり、日頃から活性剤で強化しておきましょう。

→病害虫について

木々の小話

菊の節句

旧暦の9月9日に行われる「重陽(ちょうよう)の節句」をご存じでしょうか。

現代人にはあまり馴染みのない行事ですが、実は現代の日本文化に深く根づいている「上巳(じょうし/じょうみ)の節句(桃の節句)」や「端午の節句」などとともに、古代中国から伝わった「五節句」の一つです。

今でこそ盛んに催されることはない重陽の節句ですが、平安時代から江戸時代ごろは、五節句の中でも最後の節句として、最も盛んに祝われていたようです。

重陽の節句は中国由来の行事で、日本では平安時代ごろに貴族の宮中行事として取り入れられました。当時は、菊を眺めながら宴を催し、菊を用いて厄祓いや長寿祈願をしていましたが、これが時代とともに民間にも広がり、江戸時代には五節句のひとつとして広く親しまれるようになりました。

旧暦の9月9日は、現在の10月中旬ごろに当たり、菊の花が美しく咲き、見頃を迎える時期。菊は邪気を払う力をもつ霊草と信じられていたこともあり、重陽の節句には菊の花を観賞したり、菊の花を漬け込んだ酒を飲んで、無病息災や不老長寿を願ったとされています。

重陽の節句では菊を用いられるため、一般的には菊の節句として親しまれていました。

しかし、暦の改正(新暦)にともない、9月9日はまだ菊の蕾が上るかどうかという季節になってしまいます。季節感を失ったことなどが理由で、徐々にその風習は廃れてしまったとされています。

姫寒菊の詳しいお手入れ

菊に適した用土

基本的には赤玉土を主体に腐葉土などを混ぜた肥沃な土を好みます。

「石木花の土+」が適合します。

植え替え

植え替えの時期は6~7月が適期です。2~3年おきを目安に行うといいでしょう。

菊の剪定

春~夏の剪定は伸びすぎた枝を切って整えます。しかし、先端に花芽を付けますので、過剰に切りすぎないようにしましょう。

菊の育成のポイント

○植物に四季を体感させてあげることで末永く健康的に育成できます。特に冬はしっかり休ませてあげましょう。

○夏は直射日光を避けた、明るい日陰や半日陰で管理します。よしず等で日陰を作るのもいいでしょう。

○小さな鉢で育成する場合、水切れさせないように注意します。特に夏場は、朝に水をやっても夕方乾いてしまう様なら置く場所を工夫し、出来るだけ涼しい所で管理しましょう。どうしても乾いてしまう場合には、腰水で凌ぎます。※日々の育て方をご参照ください。

○暑い時期や乾燥する時は、朝や夕方に葉水をするのも大変効果的です。

○屋内管理の時間が長いと、徐々に元気がなくなってしまいます。できるだけ自然の風に当てて育てるよう心がけましょう。雨の日は外に出して雨に当ててあげたり、夜は夜露に当てたりするとリフレッシュできます。

○活性剤を定期的に与えることで、より健やかに育成できます。

○梅雨時の病気などに注意。

○日当りの良い場所で育成して肥料を与えることが大切です。

→肥料・活性剤

深い切れ込みが特徴的な葉。
晩秋に美しい小輪の花を咲かせます。
花後に実がなりますが、鑑賞向きではありません。
耐寒性
水やり
日光
肥料