木瓜|石木花図鑑

木瓜(ぼけ)咲くや
漱石拙(せつ)を
守るべく

夏目漱石

木瓜

木瓜(ぼけ)は古くから親しまれてきた花木で、平安時代以前に中国から日本へやってきたと言われています。花が美しい上に丈夫で育てやすいので庭木や盆栽としても人気があります。原産は中国ですが、日本では特に江戸時代以降に人気が広がり、数多くの品種が生まれ親しまれてきました。

大きめの花弁や八重咲の花弁など、華やかさのある種が多いのも特徴です。
木瓜の育て方

置き場所

屋外の場合

屋外での管理が基本です。ずっと屋内で育てると弱ってしまう原因となりますので、鑑賞するなら1週間程度屋内で楽しみ、そのとき以外は屋外で育成するようにしましょう。

【春・秋】
風通しよく、明るい場所で育成します。日差しが強すぎる場合は半日陰で育成しましょう。

【夏場】
風通しのよい明るい半日陰で管理します。強い直射日光や西日は葉焼けや急激な水切れの原因になるので、よしずや遮光ネットなどを用いて日陰をつくると良いでしょう。もしくは、午前中は日が入り、午後は西日が当たらない場所でも良いです。

【冬場】
しっかり冬を体験させる必要があります。屋外管理で問題ありませんが、氷点下に冷え込む場合は寒風や霜から保護しましょう。ムロや半屋内(寒い場所)などで管理することをオススメします。なお、落葉後は日光に当たらなくても特に問題ありません。

屋内の場合

屋内で管理する場合、風通しの確保が重要になります。常時屋内では弱ってしまいますので、外の空気に当てたり、雨に当てたりしてあげると植物はリフレッシュできて元気に育ちます。また、できるだけ日当りの良い環境で育成しましょう。

エアコンの風 が直接当たる場所や、直射日光が長時間当たるなど極度に気温の上がる場所は避けましょう。

【春・秋】
日当りの良い場所で育成します。窓辺など、出来るだけ風通しのいい場所が理想的です。

【夏場】
日当りと、風通しのよい場所で管理しますが、夏の強い直射日光は葉焼けの原因になります。レースのカーテンなどで遮光してあげると良いでしょう。また、しめきった部屋では蒸れて痛んでしまう可能性がありますので、できるだけ風を通してあげると植物に優しい環境になります。

【冬場】
少なくとも5℃以下の環境で冬を体験させる必要があります。11月~2月の間は屋外に近い環境で育成しましょう。梅は落葉樹なので、寒さを体験すると紅葉し、そのあと葉を落とします。落葉後は日光が当たらない環境でも問題ありませんので、寒い場所で管理しましょう。

→冬の管理について

水やり

水やりの目安は、春秋は1日1回、夏は朝夕の1日2回、冬は2〜3日に1回です。花の咲くころから急速に水上げが始まり乾きやすくなりますので水を切らさないように注意しましょう。暑い時期や乾燥しやすい時期の葉水は、葉の乾燥防止や健康維持に効果的です。朝や夕方に霧吹きやジョウロで葉水を与えましょう。

→みずやりのタイミング

7月~8月の花芽分化期(翌年の花芽が出来る時期)は過湿気味にしていると花付きが悪くなることがあります。この時期は「乾いたら水をあげる」という事を意識すると良いでしょう。

また、どうしても乾きやすい時期や外出時などは、腰水という方法も有効です。

→腰水について

肥料

芽だし後、葉が固まる6~7月頃と、10~11月頃、週1回を目安に液肥を与えます。
より健やかに育成するために、そして花付きをよくするために肥料は効果的です。

また、花後の3~5月頃に活性剤を与えると樹勢が落ちにくくなるのでオススメです。

※バイオゴールドヴィコント564を基準にしています。その他の肥料を与える場合は説明書などを参考にしてください。
※置き肥の場合は上記の期間に月1回、固形肥料を与えます。

なお、春先の開花後は1カ月ほど「活性剤」のみ与えるようにしましょう。頻度は週1~2回が目安です。花が咲く木全般に共通しますが、開花後は少なからずストレスやダメージを受けています。その状態をケアする意味で活性剤のみ与えると樹勢が落ちず、健全な成長を助けることに繋がります。

病害虫

アブラムシ、カイガラムシ、ハマキムシが付くことがあります。また、梅雨など、高温多湿の時期はうどんこ病に注意します。

特に冬季間に硫黄合材やマシン油などを散布しておくと、春以降の害虫被害が大幅に軽減します。

→病害虫について

木瓜(ボケ)の別名

もっか、もこう、もけ、ぼっか、など。

木々の小話

文豪も愛した木瓜の花

桜より一足早い春告花の「木瓜(ぼけ)」は昔から親しまれてきました。文豪である夏目漱石もまた、大の木瓜ファンだったと言われています。

冒頭の俳句は夏目漱石が明治30年に、熊本で英語教師をしていた頃詠んだ句です。「拙を守る」とは目先の利に走らず,
不器用でも良いので愚直に生きることを意味し、漱石が生き方の基本として好んだ言葉だそう。

後の小説『草枕』では「世間には拙を守るという人がいる。この人が来世に生まれ変わるときっと木瓜になる。余も木瓜になりたい。」という一節もあるほど。また、「木瓜は面白い花である。枝は頑固で、かつて曲った事がない。そんなら真直ぐかというと、決して真直でもない。(中略)そこへ、紅だか白だか要領を得ぬ花が安閑と咲く。柔らかい葉さへちらつかせる。評して見ると木瓜は花のうちで愚かにして語ったものであろう」と主人公に語らせています。

どこか不器用に見て取れる木瓜の佇まい、そこへ咲く可憐な花や葉。そんな姿に人生のあるべき姿を感じ取った漱石の話です。何かと巧みさや変化、華やかさなどに注目され易い世の中ですが、揺るがない芯を持ち、拙を守り生きる美しさを忘れてはならないと、いつまでも心に留めておきたい句です。

織田木瓜紋

木瓜の花言葉には「先駆者」や「指導者」のほかに「平凡」という言葉があります。他にも多くの言葉がありますが、由来は伝えられていません。しかし「先駆者」という花言葉は、織田信長が家紋として木瓜(ボケ)を用いていたことに由来しているとされています。

ボケの花を模した家紋を木瓜(もっこう)紋と言い、織田家の他にも滝川家、朝倉家など名だたる名家の家紋として用いられています。その木瓜紋が、文様として日本に伝わったのは古く唐の時代だそう。しかし本来は木瓜(ボケ)をモチーフにしたものではなく瓜(うり)を輪切りにしたもので子孫繁栄を願う紋でした。

織田信長の「織田瓜」に代表とされるように、全体として花に見えるデザインをしているものが、木瓜紋と呼ばれるようになったそうです。

木瓜の詳しいお手入れ

木瓜に適した用土

基本的には赤玉土を主体に鹿沼土などを混ぜた混合土を使用します。

「石木花の土」が適合します。

植え替え

梅の植え替えの時期は芽出しは始まった頃の2~3月が適期です。葉がついた状態や、開花直前の植え替えは木にダメージを与えたり、花が咲かなくなってしまう事があります。2~3年おきを目安に行うといいでしょう。

根を深く切ってもまた新しい根が発根してくれます。植え替えの時は根をしっかり処理しましょう。不要な根や、太い根は切り落とします。

木瓜の花がら摘み

花が咲いた後、花をそのままにしていると実がなりますが、実を付けると木が体力を消費してしまい翌年の花付きが悪くなってしまいます。なので花が咲いたら花がらを摘み取りましょう。咲いた花が萎んできたら、元の方から摘み取るようにします。簡単ですが大切な作業です。

木瓜の剪定

ボケの木の剪定は年2回、花が咲いたあとと秋ごろにおこないます。春の剪定は伸びた枝を6月までに切って整えます。秋ごろの剪定は樹形を整えて健康的に育てるためのもので、葉が落葉してから行います。この際、花芽が付いた枝は来年楽しむために残しておきましょう。

また、時々ヒコバエという根元から勢いよく伸びる枝が出てきますが、これを残しておくと養分を吸い取られて本体が弱ってしまいます。これは見つけ次第切り取りましょう。

木瓜の育成のポイント

○植物に四季を体感させてあげることで末永く健康的に育成できます。特に冬はしっかり休ませてあげましょう。

○夏は直射日光を避けた、明るい日陰や半日陰で管理します。よしず等で日陰を作るのもいいでしょう。

○小さな鉢で育成する場合、水切れさせないように注意します。特に夏場は、朝に水をやっても夕方乾いてしまう様なら置く場所を工夫し、出来るだけ涼しい所で管理しましょう。どうしても乾いてしまう場合には、腰水で凌ぎます。※日々の育て方をご参照ください。

○暑い時期や乾燥する時は、朝や夕方に葉水をするのも大変効果的です。

○屋内管理の時間が長いと、徐々に元気がなくなってしまいます。できるだけ自然の風に当てて育てるよう心がけましょう。雨の日は外に出して雨に当ててあげたり、夜は夜露に当てたりするとリフレッシュできます。

○活性剤を定期的に与えることで、より健やかに育成できます。

○花を咲かせやすくするには、剪定が欠かせません。そして、日当りの良い場所で育成して肥料を与えることが大切です。

→肥料・活性剤

長楕円形で縁には鋸歯があります。
品種によって開花期は違いますが、早春に美しい花を咲かせます。
花後に実がなります。
耐寒性
水やり
日光
肥料