万両 Sarcandra glabra

この雪の
消残る時に
いざ行かな 
山橘の
実の照るも見む

万葉集第十九_大伴家持

万両 Sarcandra glabra

すっと伸びた枝先に、光沢のある濃緑色の葉を茂らせる万両(マンリョウ)。
その姿は孤島に立つ1本のヤシの木のよう…。シンプルな佇まいながら不思議と強い存在感を放ちます。丸く波打つ葉の下に、たわわに実る赤く艶ややかな実は「赤い宝石」とも呼ばれています。その華やかさと、「万両」というめでたい名前から、お正月や商売繁盛の縁起植物として古くから親しまれています。

耐暑性・耐寒性ともに高く、丈夫で育てやすい樹木ですので植物ビギナーの方や贈り物にもオススメです。
万両の育て方

置き場所

マンリョウは耐陰性を持つ植物ですので、半日陰でも元気に育ちます。日当たりの良くない環境でも育成しやすいという点では貴重な植物です。

屋外の場合

柔らかな風や、優しい雨は植物を十分にリフレッシュさせてくれます。夏は日差しが強く乾燥の原因となるので注意が必要です。

「春・秋」

半日陰で育成しましょう。

「夏場」

夏の強い直射日光は葉が傷んだり、枯れたりする原因となるので避けましょう。日陰になる場所に移動するか、すだれや遮光ネットで直射日光を遮るなど工夫が必要です。

「冬場」

寒さには強く、寒害の心配は全くありません。しかし用土が凍結してしまうとよくないので寒風や霜からは保護しましょう。ムロや半屋内(寒い場所)などで管理することをオススメします。

屋内の場合

屋内で管理する場合、風通しの確保が重要になります。エアコンの風が直接当たる場所や、直射日光が長時間当たるなど極度に気温の上がる場所は避けてください。たまに外の空気や雨に当てたりしてあげると植物はリフレッシュできて元気に育ちます。

「春・秋」

北側の窓辺のように、直射日光の当たらない窓際などで育成しましょう、カーテンレース越しの光も適します。

「夏場」

優しい日当たりで風通しのよい場所で管理します。窓辺に置く場合には、レースのカーテンなどで直射日光をやわらげてあげると良いでしょう。夏場は乾きやすくなるので、水枯れにも注意が必要です。
※室内育成の場合、小さな扇風機やサーキュレーターなどで優しい風を当ててあげるのも効果的です。常時風をあてるのではなく、リズム風や自然風に調整できるものがいいでしょう。

「冬場」

暖房の効いていない場所など寒いところで管理しましょう。気温の変化で実の充実が促されます。また、低温を体験すると春の芽吹きや花付きがよくなります。

→冬越しについて

水やり

乾燥は嫌いますので、水切れに注意。特に春~夏はたっぷりあげましょう。水やりの目安は、春秋は1日1回、夏は朝夕の1日2回、冬は2〜3日に1回です。
※冬場、屋外環境で越冬させる場合は1週間に1度くらいの頻度になりますが、定期的に乾き具合を観察しましょう。

暑い時期の葉水は、葉の乾燥防止や健康維持に効果的です。朝や夕方に霧吹き等で与えるといいでしょう。また、どうしても乾きやすい時期や外出時などは腰水という方法が有効です。
腰水について

肥料

4〜10月は週に1回の頻度で液肥を与えます。
※バイオゴールドヴィコント564NEOを基準にしています。その他の肥料を与える場合は説明書などを参考にしてください。

※置き肥の場合、コケを外して表土に置きます。真夏と梅雨を除く4~10月の期間に月1回ほど、固形肥料を与えます。

病害虫

害虫にとても強い樹木です。まれにアブラムシがつくこともありますが、その際は見つけ次第駆除しましょう。
→病害虫について

別名

藪橘(ヤブタチバナ)

木々の小話

雪の日の歌

冒頭の句は万葉集第十九にて、大伴家持が雪の日に詠んだ歌。
万両の名では登場しませんが、山橘(ヤマタチバナ)として詠まれており、今で言う、万両やヤブコウジのことです。

「この雪がまだ消えてしまわないうちに、さあ行こう。雪に映える山橘の赤い実の輝きも見に行こう。」
という、雪と赤い実のコントラストの美しさを捉え、その光景を見に行こうという情景を表しています。家持にとって白い雪と赤い実の対比が、非常に美しく神聖なものとして映ったとされています。誰かを誘っているのか、自分自身に言い聞かせているのかは定かではありませんが、その美しい光景を逃したくないという気持ちが込められています。

冬の厳しい寒さの中で、鮮やかな色彩のコントラストが織りなす自然の美しさを捉えた、万葉集の代表的な一首です。
冬の季節に人々を魅了する赤い実がどれほど美しいか見ずにはいられないですね。

名に福を宿す「両」の植物

万両は、下向きに垂れて付くその姿が、“お金がぶら下がっている”とも例えられ、“艶のある赤い実が美しい”と古くから大切にされてきました。その人気は現代でも続いています。
「両」というお金に関わる植物の代表的なものとして、同属のヤブコウジを十両、せんりょう科のセンリョウが千両になるのに対して、マンリョウは一番上の万両になり、縁起の良い名前から子孫繁栄や商売繁盛の願いを込めてお正月の縁起物として親しまれています。

万両の赤い実

夏に白い小さな花を咲かせ、秋から冬にかけて実を結ぶ万両。その実は、緑色から次第に鮮やかな赤へと熟し、深い緑の葉の下に、そっとぶら下がるように実ります。
葉の上に実をつける千両は、上空から鳥に見つけられやすく、食べられやすいとも言われています。一方、万両は葉の下に隠すように実をつけるため、上空からは見つけにくく鳥に食べられにくい、あるいは他の実に比べて好まれにくいという説もあります。

真冬になっても真っ赤な実をつける万両は、赤と緑の美しいコントラストで、冬の景色を鮮やかに彩ります。
そして、厳しい寒さの中では、鳥たちの非常食としても大切な役割を担っています。

万両の詳しいお手入れ

マンリョウに適した用土

水はけのよい土を好みます。
一般には赤玉土、鹿沼土、腐葉土を混用したものを使用します。

【石木花の土】が適合します。

植え替え

植え替えは2~3年に1回が目安。適期は4~5月です。

剪定

こまめな剪定は必要ありませんが古い枝葉を落としながら上へ上へと伸びて、毎年実のつく位置が上がっていき幹の部分が長くなります。
急激に大きくはなりませんが、成長するにつれて「腰高」になりやすいため、実が終わった4月~5月頃に、「切り戻し(剪定)」をして樹形を整えるのが管理のポイントです。
伸びてきたところで切り詰めると2~3年は実がつきにくくなりますが、新たな芽を吹かせます。

マンリョウの育成のポイント

◯植物に四季を体感させてあげることで末永く健康的に育成できます。

◯夏の水切れに注意します。朝に水をやっても夕方乾いてしまうようなら置き場所を工夫し、できるだけ涼しいところで管理しましょう。どうしても乾いてしまう場合は腰水でしのぎます。※腰水の常用はNGです。あくまで暑い期間限定にしましょう。

◯古い葉は紅葉したあと落葉しますが、長年育成すると枝ぶりが充実して枝先の葉が密集してきます。そうなった場合は一部の枝を剪定で抜いてあげたり、枝元の葉を透いて風通しを良くしてあげましょう。

〇肥料を定期的に与えることで花や実付きがよくなり、丈夫で枯れにくい木に育ちます。

◯特に屋内管理の場合は日照や風通しの条件が悪くなりやすいため、活性剤を定期的に与えることでより健やかに育成できます。

肥料・活性剤

Leaf
光沢のある濃緑色をしています。縁に波状の大きな鋸歯があります。1年を通して青々とした葉姿を楽しむことができます。
Flower
7月頃、葉の下に小さく白い花を咲かせます。
Seed
花後に緑色の実をつけます。冬には真っ赤に色づきます。
耐寒性 Cold
水やり Water
日光 Sun
肥料 Fertilizer