椿

あしひきの
八つ峰の椿
つらつらに
見とも飽かめや
植ゑてける君

大伴家持 - 万葉集 巻二十

椿

椿は「木へんに春」と書くことからも想像されるように、古来より春の象徴的な花として日本人に愛好され、特に茶道の分野では珍重されてきました。

花の素晴らしさは言うまでもありませんが、花が最盛を迎えたその刹那、ぽとりと散るその様は無常観に満ち、未練を感じさせないほどの潔い美しさを感じます。そして落花した後も地面に残る花は“落椿”とも表現され、日本らしい「寂び」の美しさを体現した春の季語にもなっています。

椿の育て方

置き場所

自生地は山中の日陰ということもあり、半日陰で元気に育ちます。しかし春や秋は出来るだけ明るい場所で育成するといいでしょう。

屋外の場合

柔らかな風や、優しい雨は植物を十分にリフレッシュさせてくれます。夏は日差しが強く葉焼けの原因となるので注意が必要です。

「春・秋」

日当りの良い場所で育成しましょう。

「夏場」

夏の強い直射日光は葉が傷んだり、枯れたりする原因となるので避けましょう。日陰になる場所に移動するか、すだれや遮光ネットで直射日光を遮るなど工夫が必要です。

「冬場」
寒さには強く、寒害の心配はそれほどありません。しかし用土が凍結して乾燥してしまうとよくないので寒風や霜からは保護しましょう。ムロや半屋内(寒い場所)などで管理することをオススメします。

屋内の場合

屋内で管理する場合、風通しの確保が重要になります。エアコンの風 が直接当たる場所や、直射日光が長時間当たるなど極度に気温の上がる場所は避けてください。たまに外の空気に当てたり、雨に当てたりしてあげると植物はリフレッシュできて元気に育ちます。

基本的には半日陰や明るい日陰を好みます。

「春・秋」
日当りの良い場所で育成しましょう。ずっと屋内では弱ってきてしまうので、鑑賞時のほかは屋外管理推奨です。

「夏場」
優しい日当たりで風通しのよい場所で管理します。窓辺に置く場合には、レースのカーテンなどで直射日光をやわらげてあげると良いでしょう。夏場は乾きやすくなるので、水枯れにも注意が必要です。

「冬場」

暖房の効いていない場所など寒いところで管理しましょう。低温を体験すると春の芽吹きや花付きがよくなります。基本的には屋外(ムロやハウス)での管理を推奨いたします。

健やかに育成するために、下記ページもご覧ください。
→植物の冬越しについて

水やり

過湿は嫌いますので、基本は乾いたらたっぷり与える様にします。特に春の成長期(4~5月)は乾きやすいのでたっぷりあげましょう。水やりの目安は、春秋は1日1回、夏は朝夕の1日1~2回、冬は2〜3日に1回です。基本はよく観察して乾いてきたら潅水します。

どうしても乾きやすい時期や外出時などは腰水という方法が有効です。

みずやりのタイミング

腰水について

肥料

4〜10月は月に1回の頻度で液肥を与えます。

※バイオゴールドヴィコント564を基準にしています。その他の肥料を与える場合は説明書などを参考にしてください。
※置き肥の場合は真夏と梅雨を除く4~10月の期間に月1回ほど、固形肥料を与えます。

なお、春先の開花後は1カ月ほど「活性剤」のみ与えるようにしましょう。頻度は週1~2回が目安です。花が咲く木全般に共通しますが、開花後は少なからずストレスやダメージを受けています。その状態をケアする意味で活性剤のみ与えると樹勢が落ちず、健全な成長を助けることに繋がります。

病害虫

カイガラムシが付くことがありますが、その際は見つけ次第駆除しましょう。

→病害虫について

椿(つばき)の品種

有名どころは、「侘助」「玉之浦」「炉開」「雪舟」「黒椿」などなど・・・

木々の小話

万葉集にも詠まれた椿。

万葉集では9首の歌が詠まれていますが、それほど昔から愛されていた椿。

冒頭の和歌を訳すと「山の尾根尾根に咲く椿、そのつらなる椿ではないが、つらつらと念入りに拝見しても、とても見飽きるものではありません、これを移し植えられたあなたというお方は。」という意味です。

庭園に美しく咲く椿を褒める歌として詠まれた歌とされています。

数多くの品種。

椿のルーツは藪椿(ヤブツバキ)という野生種ですが、藪椿は他木の花粉で受粉するため、それぞれの個体ごとに花の色・葉の形などに変化が出やすい性質を持ち合わせています。
そのため、地域ごとに花色が違ったり、突然変異の美しい花の椿が自然の山林の中から発見されたりします。

その様な椿ですが、江戸時代の園芸ブームの頃には愛好家の手によって盛んに交配され、600種以上の品種があったとされています。そして現代では1000種を超えるほど多様な花・葉の品種が存在すると言われます。

新しい花を生み出すのは愛好家にとって園芸の華とも言えますが、それほど椿という植物が魅力的であり、愛され続けているという事が窺い知れます。

椿の詳しいお手入れ

椿(つばき)に適した用土

一般には赤玉単用に桐生砂、鹿沼土などを配合した水はけの良い土を好みます。

☆「石木花の土」が適します。

植え替え

植えつけ、植え替えはの適期は3月~4月頃です。
細かな根が出やすいので、2~3年に一度を目安に植え替えると元気に成長します。

剪定

剪定せずに長期間育成すると枝が伸びすぎたり、樹形が悪くなってきます。花後の3月~4月頃に、昨年ののびた枝の2節目あたりまで切り戻します。多少切りすぎても、椿は新芽(胴吹芽)が芽吹きやすいので問題はありません。
なお、椿はその年に伸びた枝の先端付近に花芽を付けやすい性質があるので、剪定適期を過ぎてから剪定すると、花が咲かなくなるので要注意。

また、剪定は肥料がしっかり効いていることでより健全な芽吹きが得られます。

あまり肥料をあげていない場合はそれほど枝が間延びしないため、無理に刈り込む必要はありません。その場合は春先に勢いよく伸びる枝があれば切る程度に剪定します。

芽摘み

春の花後に切り戻し剪定を行うと、およそ2か月ほどで先端の新芽がどんどん伸びてきます。その際、伸びる枝の勢いを止めて樹形を安定させ、花芽を付けやすくするために芽摘みを行います。

芽摘みは、新梢がぐんぐん伸びている時に、その先端を摘み取ります。イメージとしては、先端から2~3芽くらいの位置で摘みましょう。※あまり新枝の伸びが強く無い場合はそのまま芽摘みしなくても大丈夫です。

育成のポイント

◯植物に四季を体感させてあげることで末永く健康的に育成できます。

◯夏の水切れに注意します。朝に水をやっても夕方乾いてしまうようなら置き場所を工夫し、できるだけ涼しいところで管理しましょう。どうしても乾いてしまう場合は腰水でしのぎます。※腰水の常用はNGです。あくまで暑い期間限定にしましょう。

腰水とは?

◯肥料を定期的に与えましょう。

〇しっかり剪定を行うと、樹形を維持してそのサイズ感で長く楽しむことが出来ます。

◯特に屋内管理の場合は日照や風通しの条件が悪くなりやすいため、活性剤を定期的に与えることでより健やかに育成できます。

肥料・活性剤

Leaf
光沢があり、縁に鋸歯があります。冬も葉を落としませんが、一部の古葉は落葉します。

Flower
秋~春にかけて、美しい花を咲かせます。花色は白や桃色、斑入りなど多様な品種があります。
Seed
花後に実をつけますが、あまり目立ちません。
耐寒性 Cold
水やり Water
日光 Sun
肥料 Fertilizer